子どもが勉強しないときの “親のしんどさ” に名前をつける〜不安を科学する〜

「勉強しなさいって言いたくないのに、また言ってしまった…」
「わたし、なんでこんなにイライラしてるんだろう…」

そうやって、子どもが寝たあとに、ひとりで落ち込んでしまう夜。
ありますよね。

まず、言わせてください。

あなたは、ダメなお母さんでも、お父さんでもありません。
そうなるのには理由があります。
そして、そのしんどさには名前があります。

この記事では、子どもが勉強しない、勉強できないときの“親のしんどさ”を科学していきます。

名前がつくと、混乱していた気持ちは整理され、
不安は扱えるものになります。不安に飲み込まれなくなります。

親は「未来」を背負いすぎてしまう

子どもが勉強しない姿を見ると、
頭の中で一瞬にして未来が駆けめぐります。

「このままじゃ成績が…」
「受験、大丈夫なの…?」
「将来困るんじゃない…?」
「親として止めないと…!!」

そう、子どもの“今”を見ているようで
実は “未来” を見て焦っている
のです。

SNSの「勉強している子」
塾で聞く「うちの子は毎日〇時間」
そんな情報が、不安を容赦なく刺激します。

でもね。
それは、あなたが 本気で子どもを守ろうとしているから

子どもが勉強しない、勉強できないときの“親のしんどさ”の正体は「愛情の重さ」なんです。

子どもが勉強しない、勉強できないときの“親のしんどさ”に名前をつけます

子どもが勉強しない、勉強できないときの“親のしんどさ”の名前は、ズバリ“未来責任不安”です。

未来責任不安とは:
「この子の未来は自分が守らなきゃ」
「このままでは危ないかもしれない」
と、未来のリスクを“今すぐ解決しようとしてしまう”心の状態。

この不安に飲み込まれていると…

  • 勉強しないのを見るだけで苦しい
  • 声かけが強くなる
  • 子どもの表情が曇る
  • さらに焦りが増す

という、つらいループが生まれます。

でも、大丈夫。
これも「親だからこそ」感じる、自然な反応です。

未来責任不安が大きいとき、親はこう動いてしまう

  • 「まだやらないの?」と何度も言う
  • 子ども以上に親が疲れる
  • やる気を出させる方法を探し回る
  • やらない子を見ると胸がざわつく
  • 寝る前に自己嫌悪がやってくる

これ、全部“あなたが悪い”んじゃない。

未来責任不安が、脳の余裕を奪っているだけ。

ここで必要なのは、
「頑張る」ことではなく、
未来責任不安との距離を取ること。

不安に飲み込まれないために大切な視点

「子どもが勉強しない、勉強できないとき」に苦しくなるとき、
未来責任不安で頭がいっぱいになるとき、
そこには、たった一つの理由 があります。

それは、
“過去の自分”が影響している ということ。

親は「自分の昔の記憶」を重ねてしまう生き物

  • 「あのときもっと頑張ればよかった」
  • 「あの時期さぼったせいで苦労した」
  • 「勉強しなきゃ大変なことになるって、知ってるの…」

そう。
親は自分の“苦しかった記憶”を知っている。

だから、
子どもがのんびりしている姿を見ると、

「ちょっと、わたしの二の舞やめて!!!」
という焦りが発動するんです。

この現象、心理学では
投影(projection) といいます。
子どもの姿に“昔の自分”を重ねてしまうこと。

でもね。ここで、そっと、優しく思い出してほしいのです。

あなたは、ちゃんとここまでたどり着いた人

たしかに、あの頃は苦しかったかもしれない。
でもあなたは 乗り越えた。生き延びた。今ここにいる。

過去のしんどさは
「もう二度と繰り返してはならない悲劇」ではなく、
あなたが持っている、人の痛みを理解できる力の源。

そしてもうひとつ、大事なこと。

人生は、だいたい取り越し苦労でできている

大きな声では言いませんが…

大抵の「人生終わった…」は、終わりません。
そういうもんです。

・夏休みのドリル終わらなかった? → なんとかなってる
・九九覚えるの遅かった? → 今は普通に使ってる
・受験しくじった? → 人生はそこで終わらない

そしてなにより、あなた自身が「なんとかなってきた」証人です。

大丈夫。
人生は、そんなに一撃で終わりません。

そして、子どもたちは
親が思っているより、ずっと強い。

未来責任不安は、笑いに変える

これは私がたくさんの親子を見てきて確信したことです。

子どもが勉強しない、勉強できないときの“親のしんどさ”=未来責任不安は、
「深刻」にすればするほど、巨大化します。

でも、ふっと笑いが入った瞬間に、しぼみます。

例えるなら…
不安は、風船。
笑いは、針。
“ぷすっ” で、一気に軽くなる。

たとえば、こんなふうに言い換えてみます。

  • 「このままじゃ学力が落ちる…!」
    「落ちても拾えばいいし、最悪スコップ持って一緒に掘ろう。」
  • 「宿題全然やってない…今日も…!」
    「宿題、明日まとめて大祭りにしてもいいじゃない。フェス方式。」
  • 「また漢字を間違えてる…!」
    「間違えるってことは脳みそが育ってる途中。伸びしろ、今まさに増産中。」
  • 「もう…わたしの言うこと全然聞かない…!」
    「それは自我が育ってる証拠。自我がないと生きられん。むしろ健康。」
  • 「いつになったら本気を出すの…」
    「うちの子は本気を出すタイミングを自分で選べるタイプ。ある意味、大物。」

笑いは、不安を“抱えられる形”にする魔法です。

子どもが勉強しない、勉強できないとき。じゃあ、どうする?

今日あなたがやることはひとつだけ。
「未来を見るのをいったんやめて、今の子どもを見てあげる。」

そして、
子どもの横に3分だけ一緒に座る

勉強じゃなくてもいい。

子どもが

  • レゴしてたら、横で本を読む
  • 絵を描いてたら、隣に座る
  • 笑ってたら、一緒に笑う

「この子は、ここにいていいんだ」
と伝わる関係が、勉強より先に必要な“土台”です。

最後に、大切なひとこと

子どもの未来は「親の不安」ではなく
親の“安心したまなざし”の中で育つ。

あなたが深呼吸することは、
子どもの未来を守ることです。

そして、あなたはもう十分やっている。
ちゃんと、子どもを愛している。

その愛は、ちゃんと伝わっています。

本当に大丈夫。
あなたの子は、ちゃんと育ちます。

永島瑠美

ナガシマ教育研究所(株式会社塾のナガシマ)」代表。「中学受験ラボ」代表。2015年から横浜市金沢区でナガシマ教育研究所(学習塾・学童保育)を経営。子どもの学習指導と中学受験のプロフェッショナル。指導歴は1000人以上。保育士、児童発達支援士、児童心理カウンセラー、勉強法アドバイザー。

また、教育学の研究者としても活動。東京大学教育学部卒。教育学修士。所属は日本教授学習心理学会、日本教育方法学会等。毎日子どもに向き合う実践的研究者として、現場のリアルと学問をつなぐ。最新の教育学研究の知見を、子育てに活かせる形で、わかりやすくお母さん・お父さんに伝えている。講演実績、イベント主催実績多数。

4人の子どもの母として、子育て真っ最中。



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